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皆様からの質問・疑問に専門医がお答えしています。
専門医からの回答
Q1.40代を過ぎてイライラしたりするとよく更年期と言われますが、若い時でもイライラすることはあります。いったいどこからが更年期なのでしょうか。また、更年期になった際の対処法も教えてください。(40 代女性)
A1. 更年期とは加齢に伴い女性機能が衰退し始め、排卵がなくなっていく時期を指します。実際には無月経が 1 年間持続したら、さかのぼって閉経であったと判定します。日本人女性の閉経中央値は 50.5 歳と言われています。体の中では女性ホルモンである血中エストロゲンが減少していきます。
起こりがちな症状としては、ほてりや発汗、肩こり、動機、イライラや不眠、気分の落ち込み、性欲の減退、皮膚の萎縮や乾燥、乳房の縮小や弾力低下、骨粗鬆症の進行、脂質常症、膀胱症状などです。
診断には、排卵有無の確認や月経周期の様子、エストロゲンや下垂体からのホルモン検査の値などで診断しますが、クッパーマン更年期指数なども参考になります。
症状では内分泌的あるいは精神的なものが混在しますが、漢方薬を用いたり、内分泌的原因が強い場合には、ホルモン補充療法を行います。
質問にありましたとおり 40 代でも無排卵周期が持続して、一時的に血中エストロゲンレベルが低下し、更年期様症状を呈することもあります。
更年期は、女性をとりまく環境や人間関係が大きく変化する時期でもあります。子育てのひと段落、子どもの進学や就職などです。仕事中心の女性は管理職としての悩みがあるかも知れません。また親の介護の心配が重なったりもします。
克服への近道は、更年期障害を迎える時期に、その病状の原因や特徴を家族皆で共有し理解し、そして家族全体で協力していくことと思います。
(産婦人科部長 宮田 敬三)
Q2.最近、薄毛の薬のコマーシャルをよく見かけます。病院で出してくれるお薬もあるとか。興味はあるのですが、本当に効き目があるのでしょうか?(40 代男性)
A2. AGA とは、男性型脱毛症(androgenetic alopecia)の略で、成人男性によくみられる髪が薄くなる状態のことです。思春期以降に額の生え際や頭頂部の髪が、どちらか一方、または双方から薄くなっていきます。その主な原因と考えられているのが、男性ホルモンの一種ジヒドロテストステロン(DHT)です。DHT の存在により、髪の毛の成長期が短くなるため、髪の毛が十分に育たないまま、細くて短いうちに抜けてしまいます。
これが薄毛のメカニズムです。成人男性の 3 人に 1 人は AGA が発症しているといわれています。AGAは進行性です。何もせず放っておくと髪の毛の数は減り続け、徐々に薄くなっていきます。
AGA の治療は各種外用薬や内服薬の使用が基本となります。ミノキシジルの外用、フィナステリドやデュタステリドの内服が推奨されています。内服薬は自費診療になりますが、DHT の産生を阻害することで髪の毛の成長期を正常な状態に近づけます。これにより発毛が促進され、太く長い毛が増えていきます。服用により、3 ヶ月で効果があらわれる人もいますが、通常 6 ヶ月、薬を飲み続ける必要があります。
発毛効果が得られた後に服用を止めてしまうと、再び髪の毛が元の状態に戻ってしまう可能性もあります。ご自身の判断で服用を中止せず、医師の指示どおり服用を継続しましょう。副作用として低頻度ながら、肝機能障害、性機能減退がみられることがあります。また前立腺癌の検査で測定される PSA 値を低下させるので、検査を行う際は、服用中であることを必ず担当の医師に伝える必要があります。
髪の毛のためには、十分な睡眠をとり、バランスのよい食事をとること、またタバコは頭皮の血行を悪くするため、やめることが大切です。日常生活において、髪の成長を妨げるようなことはできるだけ避けましょう。
(皮膚科部長 森 誉子)
Q3.私には一人暮らしの母親(77 歳)がおります。元来しっかりとした性格でしたが、先日帰省した時に何かおかしいと感じました。きれい好きのはずでしたが、本棚が整頓されていなかったり、会話が噛み合わず何度も同じことを話したり、最近のニュースについていけずはぐらかしたりしています。認知症を心配していますがどうしたらよいでしょうか。(40 代男性)
A3. まずは内科を受診しましょう。認知症かどうかの判断も大事で、甲状腺機能低下症・うつ病など、薬で治る内科の病気もあります。次には頭の CT 検査が大事です。脳腫瘍、慢性硬膜下血腫、正常圧水頭症、などの手術をすれば良くなる病気が鑑別できます。また血液検査などを行って、前述の病気以外のもの、例えば VitB12 欠乏、低血糖、腎不全、肝不全などの代謝疾患を鑑別することも必要です。
さてそこまで行って認知症と診断されたら、どうすれば良いのでしょうか?現在日本で最も多い認知症はアルツハイマー型認知症(AD)です。脳神経細胞にβアミロイドという物質が沈着して発病する病気ですが、その原因は不明のままで根本的治療はありません。次に多いのはレビー小体型認知症(LBD)と多発脳梗塞性認知症(MID)です。LBD は幻覚(特に幻視)が多く見られる、パーキンソン症候がよく合併する、という特徴があります。MID は脳梗塞の後遺症として現れたり、無症候性脳梗塞(隠れ脳梗塞)を繰り返すことにより起こってきたりするものです。いずれも根本的治療法はありません。
現在、認知症に使用するお薬は数種類ありますが、いずれも進行を遅くする(どれくらいかは不明)という効果しかありません。人によっては全く効果が見られない場合もあります。それよりも大事なことは、普段の生活で患者さん本人に『何かしてもらう』ことです。認知症の進行の早い人は、おおむね『日中何もせず』ボーっとしている人です。若いころの趣味を再度やってもらうとか、孫たちと一緒にゲーム(トランプなど)をやる、買い物に付き合ってもらう、など何でも良いと思います。私個人の考えですが、脳細胞も手足の筋肉と一緒で使わなければ衰えると思っています。『何かをする』ことが最も重要と考え、私の認知症外来でも患者さんの家族には「何でもいいから仕事などさせて下さい。」と指導しています。患者さん自身が脳細胞を使うことが、最も進行を遅らせるのではと思っています。
(脳神経内科部長 長江 雄二)
Q4.私が受ける健康診断では、胃の検査をバリウム検査と胃カメラのいずれかから選択することになっています。最近は胃カメラの性能がすごく良くなっていると聞きますが、なんだかカメラを飲むのが怖くてバリウム検査しかやったことがありません。胃カメラのほうがよいのでしょうか?教えてください。(50 代女性)
A4. いままで胃がん健診といえばバリウムによる胃X線検査が一般的でしたが最近では胃内視鏡検査で検診を受けられる方も非常に多くなってきました。
胃X線透視検査が胃の粘膜の凹凸や不整を影絵のように間接的にみるのに対し、胃内視鏡検査は直接胃の粘膜を観察することができます。早期の胃がんは凹凸がわずかしかないものや、色調の変化としてやっと認識できるような平坦なものもあり、胃X線検査では病変の指摘が困難な場合があります。その点胃内視鏡検査は、病変の発見において非常に優れています。また、胃内視鏡検査ではがんを疑った場合、その場でその組織を一部採取して病理診断を行うことも可能です。
「胃カメラを飲むのが怖い」とのことですが、その気持ちも十分理解できます。ただ、最近は内視鏡も非常に進歩しています。以前は口からの挿入(経口内視鏡)が一般的で苦痛が強かったですが、最近では鼻から挿入できる内視鏡(経鼻内視鏡)が多くの施設で導入されており、より苦痛の少ない方法で検査を受けることも可能です。
ぜひ一度胃内視鏡検査での健診を受けてみてはいかがでしょうか。
(消化器内科主任部長 小笹 貴士)
Q5.最近老眼のせいなのか、書類や新聞などは顔から遠くに離さないとピントが合いません。スマートフォンでニュース記事を読むのもつらいです。一度眼科にかかったほうがよいでしょうか。(40 代男性)
A5. おっしゃるとおり、手元のモノを見るときに遠くに離さないと見えないという症状は、老眼の初期症状と思われます。さらに年齢を重ねると、遠くに離してもはっきり見えなくります。
目の組織の中で、レンズの働きをしているのが「水晶体」です。近くを見たりする際には、水晶体の厚みを厚くしたり薄くしたりしてピントを「調節」しています。加齢とともに水晶体の弾力性が低下して硬くなると、近くを見るときに必要な調節ができなくなります。これが「老眼」です。
水晶体の老化は 10 代から始まっていますが、一般的に 40 歳を過ぎる頃から調節力が低下し、ピントが合わせにくくなるという自覚症状が現れてきます。そして 65 歳頃には、調節力はなくなります。
目の調節機能が衰えた状態で無理して近くを見続けることは、眼精疲労の原因になります。老眼による症状がある場合は、老眼鏡を使用する、スマホやパソコンの字の大きさを拡大する、休憩する、眼鏡の度が合っているか確認するなど目の負担を軽くし、うまく付き合っていく必要があります。
また、老眼以外にもドライアイや緑内障、斜視など、他の疾患が原因のこともあるので、症状があるようでしたら、一度眼科での検査をお勧めいたします。
(眼科部長 丹羽 慶子)
Q6.数か月前から、いぼ痔だと思われるでっぱりがお尻にあることに気が付きました。痛くもないので放っておいていたら、最近になって激しく痛むようになり、排便時に出血するようになりました。とにかく痛くて、仕事(長距離トラックの運送業)にも差し支えます。触ってみると以前より大きくなっているように思われます。どこの医者に診てもらえばよいのでしょうか?どうか教えてください。あと、手術は怖いので勘弁してください。 (50 代男性)
A6. ご質問に答えさせていただきます。診察は外科(肛門科)です。
お尻の病気の中では痔が一番有名ですよね。症状は出血、痛み、腫れ、肛門から出る、かゆみ、粘液が出るなどがあります。部位によって内痔核と外痔核と呼ばれます。内痔核の重症度分類ではⅠ度:便の時に腫れるが肛門から出ない、Ⅱ度:便の時に肛門から出るが終わると戻る、Ⅲ度:便の時に肛門から出るが手で戻すことが出来る、Ⅳ度:いつも肛門から出ている、とされています。症状や生活環境にもよりますが先ずは生活習慣の改善(便秘のコントロール、長時間の座位をしない、過度の飲酒をしない、ストレスなどを避ける等)とお薬での治療(保存的治療)から開始されることがほとんどです(III度程度までの適応)。その他には硬化療法や手術療法があり、経過や症状でこちらの治療法を優先する場合もあります。
他に要注意な病気は癌です。今回お問い合わせの症状は肛門近くの癌でも当てはまることがあります。痔だと思って放置していたら癌だったとか、近くに癌があることに気づかなかったということは決して珍しいことではありません。
お尻の病気はとても気になりますが自分で直接見ることも出来ません。また人に見せたくもありませんよね。でもお早めに受診されることをお勧めします。
(外科部長 小川 敦司)
Q7.私は健診に引っかかるような異常は特にないのですが、いわゆる「ぎっくり腰」を繰り返しています。最初に腰痛になったのは 30歳過ぎでした。だいたい数日横になっていると治まるのですが、いったん発症すると仕事に穴をあけることになり、それが心苦しくてつらい思いをしています。仕事は外構工事をやっています。何かいい腰痛予防法とか、発症時の対策などありますでしょうか? どうか先生教えてください。 (41 歳男性)
A7. 繰り返す腰痛、お辛いですよね。早速ですが質問にお答え致します。
腰痛には検査(画像検査や血液検査など)で異常所見を認めるものと、異常所見を認めないにも関わらず症状があるもの“非特異的腰痛”があります。腰痛を訴える患者さんのほとんど(約85%)が“非特異的腰痛”に分類されると言われており、いわゆる「ぎっくり腰」もこれに含まれる可能性が高いと考えます。今回は“非特異的腰痛”についてのお話をさせて頂きます。腰痛発症時にはまず局所の氷冷・温熱を行い、腰痛の程度によっては鎮痛剤を使用します。なるべく安静臥床は避け、痛みに応じた活動は継続すべきです。痛みに応じた活動の維持は「より早い痛みの改善につながり、休業期間の短縮とその後の再発予防に有用である」と言われています。
再発予防としては、日常生活や仕事の際に中腰などの無理な動作を避ける・同一姿勢を続けないなどの意識が重要です。次に“非特異的腰痛”を繰り返す患者さんでは、体幹筋力の低下や持久力の低下が症状の遷延や悪化に関与していると考えられます。そのため運動によって筋力や持久力を維持・強化することは再発予防法として理にかなっています。また日常的に適度な運動を行う事で、脳からドーパミンという神経伝達物質が放出され痛みを抑える仕組みが活発化するとも言われています。腰痛が発症した場合に必ずしもすぐに検査を受ける必要はないと思いますが、神経症状(脚の痛みなど)を伴う腰痛・鎮痛剤などを飲んでも改善しない腰痛に対しては病院を受診し検査を受ける事をおすすめします。
(整形外科副部長 浅野雄資)
Q8.私の仕事は会社員で主にデスクワークです。残業はあっても 1 時間程度で、生活は規則的です。運動習慣はありません。妻と高校生の息子と 3 人暮らしです。これまでに大きな病気にかかっていません。数年前から健診でメタボリックシンドロームと診断されていますが、体重とウエストはなかなか減りません。今年の健診では血圧が 155/89mmHg で、受診勧告があり、病院にかかりました。一とおりの検査をうけたところ二次性高血圧ではなく、本態勢高血圧と診断され内服開始となりました。しかし自宅での血圧測定ではあまり効いていないような印象で、自分に合っていない薬なのではと心配になってきました。そこで不躾ながら質問ですが、血圧の薬はどれくらい種類があって、医師は患者にどういう基準で処方しているのでしょうか?どうか先生教えてください。(51 歳男性)
A8. 多くの人は血圧が高くても、特に症状無く日常生活を過ごされています。
では、なぜ血圧を治療する必要があるのでしょうか。それは、高血圧の合併症でもある動脈硬化、すなわち、「高血圧が何年も続いているとこれに対抗して血管の内側に筋肉やコレステロールがつき細くなることで血管が通りにくくなり、心筋梗塞や脳梗塞、腎不全など臓器がダメージを受けること」を予防するためです。以前は、診察室での血圧が下がればそれで良いと考えられていましたが最近は自宅で落ち着いた気分のときの血圧が重要といわれています。
ことわざに「火事場の底力」とありますが、健康な人でも緊急時には心臓が潜在的な能力を発揮し、血圧と脈拍が上がります。しかし、健康な血管(動脈)は丈夫に柔らかくできており、通常は 200mmHg 程度の血圧では破裂しません。逆に、すでに動脈硬化がある人は細い血管を頑張って通すために血圧が上がっており、急に下げると心筋梗塞や脳梗塞に繋がることがありました。このため、最近は 1~2 ヶ月かけてゆっくり下げることが推奨されています。
代表的な薬としては、①カルシウム拮抗剤:比較的強く血管を開く作用もあるが、降圧の効果以上に長生きに繋がるデータは少ない。②アンギオテンシン変換酵素阻害薬/アンギオテンシン受容体拮抗薬:心臓や腎臓を保護する作用 があると言われ、長生きにつながるデータが多いが、カリウムが上がったり、腎臓の負担が強い人などには使えない。ときに空咳。③利尿薬:他の薬と合剤で、補強効果。尿が増え、腎臓の負担も増えることも。④β遮断剤:脈を下げる作用があり、心臓を長持ちさせ、長生きにつながるが、心臓が弱い人は心不全になることも。肺が悪い人や、喘息の人には使えにない。⑤その他、いくつかの薬の合剤が処方されることもあります。
以上のように、血圧の薬はただ下げるだけではなく、他の病気や副作用なども考え、それぞれの患者さんに合わせ選択されていますが、効果はすぐに表れないこともあります。
また、減塩や運動習慣、減量などの生活習慣の改善は、血圧低下、長生きにつながります。(ただしやめると元に戻るのは薬と同じ。)ご自宅での血圧や測り方等含め、かかりつけの先生とよく相談いただければと思います。
(循環器内科主任部長 玉井 希)
Q9.私の母についての相談です。年齢は 78 歳で一人暮らしをしています。5 年位前から耳が遠くなり、会話では何度も聞き返したり、テレビのボリュームがすごく大きかったりしていました。本人はさほど不便を感じないようで、補聴器を勧めましたが嫌がってしまいました。最近ではわからなくても聞き返さずにハイハイとうなずいて、会話が成立しなくなっています。新型コロナで緊急事態宣言が出てからは、人と会うことが少なくなり一日中テレビを見ていて、表情もぼんやりした感じになってきました。このままだと認知症になったり、特殊詐欺にあうのではと心配しています。どうしたらよいのでしょうか?どうか先生教えてください。(52 歳男性)
A9. ご相談にあるように、本人は平気だと思っていても、家族や周囲の方々のほうが困っているというケースはよくあります。
難聴があると、人の会話が聞き取れず聞き返しが多くなってしまいます。何度も聞き返すことを遠慮したり、面倒になったりすると、とりあえず返事をして大事なことを分からないまま判断してしまって、後で問題になるおそれがあります。また、最近では難聴があると認知症やうつ病になりやすいともいわれています。
もし難聴でお困りのことがあるようでしたら、まずは原因を調べるために耳鼻咽喉科への受診をおすすめします。耳垢栓塞、中耳炎などが原因であれば処置、手術、投薬などの治療で聴力が改善する場合があります。加齢性難聴であると治療での改善が難しいので、中等度から高度難聴であれば補聴器を使うのがよいと思います。
社会生活において、聴力はとても大切です。補聴器を適切に使用するなど、難聴への対応が認知症の予防につながる可能性も示唆されていますので、難聴を放置せず、早めに対応することがとても重要だと思います。
(耳鼻咽喉科部長 清水 崇博)
Q10.気になる肌のシミについて質問です。私は仕事もプライベートでも屋外で過ごすことは少ないので、紫外線対策は夏だけしかしていませんでした。
先日家族から頬にシミが目立ってきたと言われました。それ以来、鏡で自分の顔を見るたびに気になって仕方がありません。いったん出来たシミはどうしたら目立たなくなるのでしょうか?どうか先生教えてください。(40 歳代 女性)
A10. 顔のシミは、老人性色素斑、脂漏性角化症、肝斑、後天性両側性太田母斑様色素斑、炎症後色素沈着などの疾患の可能性があります。疾患によって治療法や予防法が異なることがあります。
30-40 歳代から目立ってくるシミの多くは、老人性色素斑や脂漏性角化症の可能性があります。日常生活での紫外線対策はシミの予防に役立ちます。夏の晴れた日中は紫外線が強いですが、それ以外の季節や天気でも紫外線はそれなりに含まれています。季節や天気にあわせて紫外線を避けることは有用です。治療としては、外用薬、内服薬、レーザ治療、ケミカルピーリングなどがあります。外用薬としてはハイドロキノン含有剤の外用薬などがあります。ハイドロキノン含有外用薬は、扱っている医療機関が限られてくるため、おもに自費治療を行っている美容皮膚科での処方になります。
内服薬としては炎症後色素沈着にはビタミン C の内服が一般的です。ビタミン C 以外の内服薬としてトラネキサム酸や L-システインがありますが保険医療ではシミへの適応はなく、自費治療を行っている医療機関などでの投薬・購入になります。効果は個人差が大きいことと効果が出るまでに時間がかかることが難点ですが試してみる価値はあると思います。
(皮膚科部長 榊原 代幸)
Q11.新型コロナ感染が減り緊急事態宣言が解除されたので、久しぶりに実家へ帰り両親に会いました。母の手料理をおいしく食べたのですが、昔に比べて味が濃くなったような気がしました。煮物やみそ汁などずい分塩辛く、ぬか漬けなど漬け物にはまっているようで老夫婦二人暮らしでは食べきれないほど大量に漬け込んでいました。両親の血圧が心配です。母に言いましたが取り合ってもらえません。離れて暮らす親に減塩に取り組んでもらいたいのですがどうしたらよいのでしょうか?どうか先生教えてください。(40 歳代 男性)
A11. 今回は食事療法のお話ですので管理栄養士さんに答えていただきます。
和食は、塩分を使う料理が多いため、毎日食べている煮物や味噌汁の味が塩辛くなっていても、なかなか気づかないものです。減塩について、私たち管理栄養士よりいくつか提案させてください。
和食の味付けは、だしを効かせて減塩にすることをお勧めします。市販の和風だしの素は塩分が含まれているため、注意が必要です。最近は、減塩対策として塩分不使用のだしや粉末の昆布やかつおなどのうまみ成分を利用した商品があります。
味噌汁などの汁物の塩分は、塩分測定器で塩分濃度を測ることができます。次ページの図のような塩分測定器で、簡単に測ることができます。家電量販店などで 3000 円くらいからお求めになります。ご両親にプレゼントしてはどうでしょう。
ぬか漬けなどの漬物は、塩分が多い食品です。漬物の代表の梅干しは、大きいものでは約3g、減塩タイプのものでも約 1g の塩分が含まれています。漬物を作ることが楽しみなら、おから漬けや浅漬けなど塩分を控えた漬物を紹介してはどうでしょう。おから漬けは、大豆と昆布のうまみを利用した漬物です。浅漬けは、商品説明書の通りの時間漬けてください。長時間つけると塩分が多くなります。漬物は塩分が多いため、1 日 2 切れ程度にとどめましょう。
減塩グッズでは、スプレー式しょうゆさしがあります。表面にスプレーすることで薄味でも美味しいと感じることができます。普通にしょうゆを上からかけるよりも、ぐっと量を抑えることができます。
ご両親に塩分の摂り過ぎで起こる症状(喉の渇き、むくみ、血圧上昇など)がないか確認することも塩分摂取量の目安になるのでお勧めします。
(主任栄養士 木村 華委子)
Q12.数年前からいわゆるでべそが目立ってきて、だんだん大きくなっています。手で押すと一旦へこむのですが、すぐ元通りになります。今のところ痛みはありませんが、ネットで検索すると急に悪化することがあるそうで悩んでいます。やはり手術をした方が良いのでしょうか?どうか先生教えてください。(60歳代 男性)
A12. 臍ヘルニアという病名です。そもそもヘルニアというものは、様々な原因により図のように腹壁(お腹の壁)に欠損ができた状態のことをいい、腸が出てくることから脱腸(だっちょう)とも呼ばれています。その発生部位によって臍ヘルニア、鼠経ヘルニア、大腿ヘルニア、閉鎖孔ヘルニアなどに分類されます。腹壁欠損部から腸管や脂肪が脱出し膨らんで触れ、自覚することが多いです。手で押さえたり仰向けに横になるとへこむようであれば放置しても問題ないですが、稀に戻らなくなったり固くなってしまうことがあります。
このような状態を、嵌頓(かんとん)と呼び、脱出した臓器がくびを絞められたような状態です。激しい痛みを伴うことが多く、この状態でそのまま放置すると血流が悪くなって脱出した臓器が腐ってしまいます。一度嵌頓(かんとん)してしまうと御自身で戻すことは難しく、場合によっては生命に関わるほどの事態になることもあり早急に手術が必要になります。そして、一般的に成人の臍ヘルニアはこの嵌頓(かんとん)のリスクが他のヘルニアよりも数倍高いと言われており、臍ヘルニアは発症した時点で全て手術適応となります。
手術法はヘルニアの大きさや発生部位により異なりますが、一般的な臍ヘルニアであれば 1 時間以内に終わる手術であり術後も数日で退院が可能です。当院ではヘルニア手術に対しても腹腔鏡手術を積極的に導入しています(近隣では愛知医大病院以外は行っていません)。従来の方法と違って、痛みが少ないことや術後の違和感をほぼ感じることなくすぐに今まで通りの日常生活が可能となります。
ヘルニアは手術以外に治ることがない数少ない疾患であり、また、悪化すれば命に関わることもあるとても怖い状態です。「痛くないからいいや」と放置していてもその膨らみが治ることは決してありません。そして、嵌頓(かんとん)してしまうことは誰にも予想できず、いつそのような状態に陥ってしまうかも予測できません。そのような不安を抱えたまま生活し続けねばならないことは患者さんの悩み、ストレスとなってしまいます。早く手術・治療することで悩みからも解消され、今後の不安やリスクからも解放できますのでまずはお気軽に御相談下さい。
(外科部長 倉橋真太郎)
Q13.最近、胸やけを生じたり、食後や夜間に酸っぱいものや苦いものが上がってきます。コロナ禍で運動不足も重なり体重も増加傾向です。それに伴って症状も悪化しているように感じます。何か関係があるのでしょうか?また、胃カメラは飲んだほうがいいのでしょうか?(40 歳代 男性)
A13. 症状からは胃食道逆流症を疑います。
胃食道逆流症は、胃内容物が食道へ逆流することにより不快な症状をきたす病態の総称です。その中で、内視鏡検査で食道粘膜にびらんや潰瘍など粘膜障害を認めるものをびらん性胃食道逆流症(逆流性食道炎)といいます。症状はあるが、内視鏡では粘膜障害を認めないものを非びらん性胃食道逆流症といいます。
典型的な症状としてはみぞおちから胸部にかけての灼熱感を伴う不快感である胸やけ、胃酸が喉または口まで上がることにより酸味や苦みを感じる呑酸を認めます。
診断は、症状と内視鏡検査によります。
治療は、肥満の是正、過食の回避などの生活習慣改善や酸分泌抑制薬による薬物療法が主体となります。ご相談者も、最近体重が増えたとのことで、これが症状の悪化の要因になる可能性があります。適度な運動、過食の防止により体重を適正体重に戻すことが大切です。
ただし、胃食道逆流症以外にも、好酸球性食道炎など他の食道に炎症を起こす病気や、胃がんなど腹部の悪性腫瘍による胃の内容物の排出遅延による症状の可能性もあります。一度は、内視鏡検査(胃カメラ)を受けられることをお勧めします。当院でも最近は、苦痛の比較的少ない経鼻内視鏡(鼻から入れる胃カメラ)も積しておりますので、お気軽にご相談ください。
(消化器内科部長 松田 大知)
Q14.夏場に地下鉄などで脱毛に関しての広告をよく見かけ、興味をもちました。脱毛とはどのようなものがあるのでしょうか。(40 歳代 男性)
A14. 脱毛には、医療機関で行う医療脱毛とエステティックサロンなどの医療機関以外で行う脱毛があります。医療脱毛は半永久的な脱毛を行う医療行為になります。
医療脱毛の方法は以前には絶縁針を用いた方法が多かったですが、最近は医療レーザー脱毛が主流です。医療レーザー脱毛は照射したレーザー光が毛のメラニンに吸収されて熱になり毛や毛根を壊して毛が生えなくする方法です。
使用するレーザー脱毛機器によって照射するレーザー光の種類や照射方法などが異なります。また、1 回の脱毛処置で脱毛が完了するのではなく、間隔をあけて何回かの脱毛処置を行うことになります。
(皮膚科部長 榊原 代幸)
Q15.むくみの原因の鑑別方法をおしえてください。(60代 男性)
A15. 各種原因についての説明からさせていただきます。
1.浮腫の定義および原因分類
浮腫ですが「間質水分量の増加」と定義されます。
まずは原因および病態から、原因別についての分類を行います。
浮腫の原因の分け方として、生理学的な分類としては
①毛細血管静水圧の上昇 ②毛細血管透過性の更新
③間質膠質浸透圧の低下 ④リンパ管への灌流障害
以上4つに分けることができます。
①毛細血管静水圧の上昇(congestive edema)
・心不全 ・静脈閉塞 ・腎不全 ・慢性静脈不全 ・薬剤性浮腫 ・妊娠・肥満
②毛細血管透過性の亢進(capillary edema)
・血管炎 ・熱傷 ・炎症 ・(特発性浮腫)・薬剤性浮腫 ・アナフィラキシー
③間質膠質浸透圧の低下(hypoalbuminemic edema)
・肝硬変 ・低栄養 ・ネフローゼ症候群 ・蛋白漏出性胃腸症 ・吸収不良 ・アミロイドーシス ・多発性骨髄腫 ・悪性腫瘍 ・感染症
④リンパ管への還流障害(リンパ浮腫)
一次性
・リンパ組織の先天異常
二次性
・感染 ・悪性腫瘍 ・放射線治療
浮腫の原因として主な疾患は上記の分類ができます。
また、腎臓領域における浮腫の原因の分け方として循環血液量の減少(underfill)と増加(overflow)に分ける考え方があります。
Underfill はネフローゼ症候群や肝硬変、低たんぱく血症などによって血管内脱水や虚脱のため循環血液量が減少しており、血漿膠質浸透圧の低下により浮腫が起こる病態です。Overflow は心不全や腎不全によって心臓への灌流障害あるいは腎臓から尿への排泄障害により循環血液量が増加し、静水圧が上昇して浮腫をきたします。血漿レニン活性は underfill では亢進、overflow では抑制に働き、腎臓領域の腎不全は overflow によって説明することができます。
次に浮腫の鑑別について、御説明します。
2. 浮腫の診断および鑑別
浮腫の鑑別疾患
別図①をご参照ください。全身性浮腫か、局所性あるいは片側性の浮腫か、nonpitting edema か pitting edema かおよび pitting edema の戻りが早いか、遅いかである程度推定が可能です。
問診のうえ、身体所見を観察のうえ検査を行います。
①問診
浮腫の出現時期、および悪化のスピード。数分~数時間で急速に発症する口唇浮腫や眼瞼浮腫、喉頭浮腫は血管性浮腫の可能性あり。血管性浮腫は通常は頭部や頸部に原曲することが多いが、気道閉塞・アナフィラキシーショックのため急激に進行する場合があり、迅速な診断と処置が必要です。
手術などの既往歴などの聴取、腎疾患、肝疾患、心疾患、内分泌疾患の既往を聴取します。肝硬変はC型肝炎からの進展も多いため、輸血歴や家族歴も聴取する。また、薬剤や食物に対するアレルギー歴も鑑別の為に必要です。そのほか食塩摂取量、飲水量、服薬中の薬剤、尿量、体重の変動(日内格差、健康時との増減比較)、自覚症状の推移などを聴取する。また、息切れ、呼吸困難、痛み、熱感、発赤、腫瘤、麻痺、寝たきり、下痢など他の症状がないかどうかの確認をします。
②身体所見
A:浮腫の分布
全身浮腫は心不全、腎不全、ネフローゼ症候群、肝硬変など全身性疾患が多い全身不全浮腫は重力の影響をうけるため、立位では下肢からです。長期臥床患者では体幹の背部から始まり分布します。このため体位によって移動するのが特徴です。
局所性浮腫は静脈やリンパ管の閉塞では閉塞部位の抹消測に、炎症性浮腫では炎症側に生じます。通常片側性にみられますが、上大静脈症候群のように中心静脈の閉塞をきたすと両側性になります。眼瞼、手指、陰嚢、脛骨前面は、組織圧がひくいため浮腫が出現しやすいです。
B:圧痕性浮腫(pitting edema)か、非圧痕性浮腫(non pitting edema)か
圧痕は脛骨前面の抹消3分の1付近、足背や仙骨などの部位で圧迫して確認します。これらの部位は皮下に軟部組織が少なく、かつ骨が近いので圧迫が容易なため軽度の浮腫をみつけることができます。圧迫時間は 5 秒以上、約 10 秒で指を離した後も圧痕をみとめる場合は圧痕性浮腫(pitting edema)です。圧痕性浮腫は皮下の間質に水分が豊富に貯留している場合に認められます。一方、圧痕が残らない場合は非圧痕性(non pitting edema)で、間質内に貯留する成分が蛋白と結合して間質内ゲルが増加して腫れた場合、甲状腺機能低下や長期化したリンパ浮腫などにみられます。
圧痕性浮腫(pitting edema)には、回復時間 40 秒未満の fast edema と、40 秒以上の slow edema とがあります。Fast edema のほとんどは、低アルブミン血症に伴う浮腫です。眼瞼浮腫は検者の第 1 指と第2指で上眼瞼を縦につまんで、指を離したときに皺が残るようであれば眼瞼に浮腫があるとします。
C:皮膚所見
静脈の逆流に伴ううっ血による静脈圧上昇によって生じる下肢静脈瘤の浮腫では多くが色素沈着をきたし、さらに重度になると下腿に潰瘍をきたします。慢性化したリンパ浮腫では皮膚が固くなり褐色調となります。
D:その他身体所見
全身性浮腫では、血圧、心拍数、呼吸数、心肺聴打診所見、肝腫大、腹水、頸動脈怒張も重要です。右心不全では中心静脈上昇による頸動脈怒張がみられ、消化管浮腫による食欲低下や悪心をきたすこともあります。また、左心不全では呼吸困難、手足の冷感、チアノーゼ、湿性ラ音がみられます。
黄疸、クモ状血管腫、手掌紅斑、女性化乳房、腹水は肝硬変を示唆します。甲状腺機能低下では、顔面浮腫、眉毛脱落、皮膚乾燥、嗄声、低体温、徐脈などがみられます。
E:血管内容量の把握
ネフローゼ症候群、肝硬変、低栄養、systemic capillary leak syndrome(全身性毛細管漏出症候群)などでは、大量の水分が体内に貯留していますが、血管内低用量・血管内脱水となっていることがあります。血管内容量を把握する必要があります。中心静脈の評価として、エコーによる下大静脈径の測定を行います。
③検査項目
尿検査、血液学的、血液生化学的検査(血清蛋白、アルブミン、肝機能、腎機能、電解質、脂質、血糖、CRP)をスクリーニング検査として行います。
心性浮腫には、胸部 X-P、心電図、BNP、心エコー
肝性浮腫には、ビリルビン、コリンエステラーゼの測定、腹部エコー、腹部 CT
腎性浮腫には、尿検査+尿沈渣、1 日尿蛋白、腹部エコー、ASO、IgA、C3 C4 CH50
甲状腺疾患の鑑別として 甲状腺ホルモン測定
蛋白漏出性胃腸症ではシンチグラフィが、臓器の評価とともに浮腫の部位、程度の評価に有用です。
リンパ浮腫には、リンパ管の走行、発達、閉塞を確認するために RI リンパ管造影を行います。
一口に浮腫といっても、鑑別が多岐にわたります。
もし浮腫の鑑別にお困りの際はいつでも当院にご紹介をお願いします。
(腎臓内科部長 市川 匠)
Q16.もう孫がいる年齢だけど、子宮頚がん検診っていつまでやる必要がありますか?意味あるの?(74歳女性)
A16.
頑張って受けましょう。間隔はかなり空けてもよいかもしれません。子宮がんには二種類あることを知ってますか?確かに、高齢に伴い、子宮頸がんは少し減って来ますが、子宮がある限り無くなりはしません。急に出血してきたら、心配ではありませんか。普段検診を受けていれば、手遅れになることはまずないでしょう。
また、最近増加しているのが、子宮頸がんより多くなってきている子宮体癌、症状のない卵巣がん。これらに注意する事もとても大切です。特に卵巣がんは膵臓がんと並んで沈黙の臓器と言われ、症状が出た時には、進行しており、ステージ3や4での発見となるケースが多い病気です。子宮頸がん検診で偶然わかる事もあり、早期発見、早期治療が可能となります。本来検診は子宮頸がんの検診ですので、施設により十分な検査が出来なかったり、超音波の検診はオプションとなる場合がありますので、施設、担当医にお確かめください。
(婦人科主任部長 浅井 英和)
Q17.子宮頸がん検診ってやらなきゃいけないの?(24歳女性)
A17.
ぜひ検診を受けて下さい。なぜなら新しい検査方法(ベゼスタシステム)が導入されてからは、定期的な検査で子宮頸がん亡率が減少することが証明されている唯一の検診だからです。しかも、前がん病変(がんになる前の病変で子宮を温存して治可能な時期)の時点で発見できるからです。「もし異常だなんて言われたら怖いな?」って思うかもしれませんが、がんになる、前の前で発見されることが多いので、逆に安心なのです。がんになる一歩手前、前がん病変で見つかればむしろラッキーかもしれません。
前がん病変での治療は手術と言っても子宮頸部円錐切除と言って、2、3日の入院で1時間以内(だいたい15分から30分ぐらい)での手術時間で済みますし、お腹を切る手術ではないので、術後ほとんど痛みを感じません。軽い生理痛ぐらいです。さらに進行した0期と言われる早期癌の子宮頸部上皮内がんでも、この治療で良いとされています。高齢者や子宮の必要のない方では子宮全摘も推奨されています。これから子供が欲しい方や、子供がすでにいる方は、子宮を温存できることは、とても大切なことですね。
一方、Ⅰ期の初期の子宮頸がんでは、子宮を摘出しなくてはならないのはもちろん、ほとんどが骨盤内リンパ節を伴う広汎子宮全摘出が必要となる事が多いです。子宮を取られてしまうというショックだけでなく、6時間以上、時には10時間近くに及ぶ大手術で、術後合併症として、足のむくみ(下腿浮腫)、排尿障害(時に自己導尿)などの合併症と付き合っていかなきゃならない事も覚悟しなければなりません。しかし、欧米の検診受診率が80%以上であるのに対して、日本では40%前後と、とても低いのが現状です。中でも10代から20代の若い女性の検診率が先進国の中で極めて低く、若くして子宮頸がんにかかり、子供の産めない身体になったり、子どもを授かったのに産めなかったり、時にはお母さんだけ死亡してしまう痛ましい状況が起きています。このため、最近日本では子宮頸がんを“マザーキラー”とも言われ恐れられています。
現在日本では、年間1万人以上の方が子宮頸がんにかかっています。しかも、その約16%が20~30代の女性です。
自分の身だけでなく、愛するわが子、これから産まれてくる子供のためにも子宮頸がん検診を受けて下さい。
(婦人科主任部長 浅井 英和)
Q18.いつも風邪を引いた後に咳だけが何週間も長く続きます。診察を受けた方がよいでしょうか。(39 歳 男性)
A18.
風邪などが良くなった後に残る咳は感染後咳嗽と呼ばれ、それだけで長く続くこともあります。しかし咳は 3 週間を超えると遷延性咳嗽と区分され、感染後咳嗽だけにしてはちょっと長い印象です。8 週間を超えると慢性咳嗽と呼び、感染後咳嗽だけであることは少ないです。ご相談者様のように何週間も続くとなると、別の病気を合併しているのかも知れません。
風邪の後に続発する長引く咳の病気として、具体的には咳喘息や副鼻腔炎などが挙げられます。咳喘息は咳のみを症状とする喘息で、ぜーぜーしたり、苦しくなったりすることがないので喘息とは気づかれにくい特徴があります。ご相談者様のように風邪の度に繰り返し咳が長引く方には、この病気を気づかずにお持ちの方も多いです。残念ながらはっきりとわかる検査や診断方法はありませんが、病歴や参考となる検査所見からこの病気が怪しいと思われたら、吸入ステロイド剤という喘息の治療を実施し、通常よりも明らかに早く咳が治まれば、診断となります。鼻汁や鼻閉などの鼻の症状を伴う場合、風邪から続発した副鼻腔炎(蓄膿症)や鼻炎による咳も鑑別になります。抗生剤や抗アレルギー薬などで治療すると鼻症状と共に咳も落ち着いていきます。
このような風邪で惹起される咳の原因疾患のみではなく、たまたま風邪をひいた時から症状が出始めた、全く別の病気の可能性もあります。咳は全ての気道の病気で生じる症状であり、軽い風邪から肺がんのような重い病気まで様々な病気の可能性があります。心配し始めるときりがないことになりますが、長引く時、呼吸困難や胸痛などの別の症状を伴う時などはただの風邪ではないかも知れませんので、診察を受けて頂くことをお勧めします。
(呼吸器内科主任部長 黒川良太)
Q19.先生に言いたいことは沢山あるのに、実際に診察を受ける時になるとうまく自分の症状を伝えられません。どうしたらよいでしょうか。
A19.
アドバイス:医師に伝えたいことを事前にメモしておきましょう。
お気持ちとてもわかります。自分の状態を医師に伝えることは、正しい診断や適切な治療を受ける上で非常に重要ですが、いざ診察室に入って医師を前にすると自 分の症状や病状を伝えることは患者さんにとってはとても緊張することですよね。また、症状が出現した正確な時間や経過などは診察までの間に忘れてしまっていることもあるでしょう。
そこで、あらかじめ医師に聞きたいことや、伝えたい要望、病状の経過などについてメモにまとめてくることが役立つかもしれません。紙に書き出して情報を整理しておくことで、診察中に見落としがちな部分を漏れなく医師に伝えることができますし、自分の記録としても役立ちます。
また、その際に自分が感じたことなども一緒にメモしておくと、医師は患者さんがどのよ うなことを不安に感じているのかわかりますし、患者さんにとっても紙に書き出すことによって、あとから振り返ったときに自分の感情を俯瞰的にみるきっかけにもなります。
同様に、診察の際に医師が言ったことのメモをとることもおすすめです。医師からの説明や治療の内容などを自分なりに簡単にメモしておき、わからないことや気になる点があればその場で遠慮なく質問しましょう。診察で自分が言いたいことを上手く伝えられない患者さんは、自分の状況や伝えたいことをあらかじめメモにまとめてくることを心掛けてみてください。それがより良い医療を受ける第一歩となるかもしれません。
(総合内科主任部長 小栗 太一)
Q20.骨粗鬆症について
■質問1.骨粗鬆症とはどんな病気ですか?
■質問2.骨折のリスクはどのくらい高くなるのでしょうか?
■質問3.骨粗鬆症の治療法にはどのようなものがありますか?
■質問4.日常生活で気をつけるべきことは何ですか?
A20.
■質問1.骨粗鬆症とはどんな病気ですか?への回答
骨粗鬆症は「静かに進行する骨の病気」です。
・骨の量(骨量)が減少し、骨の内部構造が弱くなります。
・結果として骨が脆くなり、骨折しやすくなります。
・早期発見と適切な管理で予防・治療が可能です。
■質問2.骨折のリスクはどのくらい高くなるのでしょうか?への回答
骨粗鬆症により骨折リスクは大幅に上昇しますが、予防は可能です。
・健常者と比べて 2?4 倍の骨折リスクがあります。
・主な骨折部位として脊椎(背骨)、大腿骨近位部(太ももの付け根)、橈骨遠位端(手首)が挙げられます。
・適切な予防策で骨折リスクを大幅に減らせます。
■質問3.骨粗鬆症の治療法にはどのようなものがありますか?への回答
薬物療法と非薬物療法を組み合わせた総合的なアプローチが効果的です。
1. 薬物療法
・内服薬と注射薬があります。
・個人の状態に合わせて適切な薬を選択します。
2. 非薬物療法
・適切な運動
・バランスの取れた栄養摂取
・転倒予防
医師と相談しながら、最適な治療法を選びましょう。
■質問4.日常生活で気をつけるべきことは何ですか?への回答
転倒を防ぐ生活習慣、健康的な生活スタイルを目指す事が重要です。
1. 転倒予防:
・家の中の段差をなくす
・明るい照明を使用する
・必要に応じて杖や歩行器を使用する
2. 適切な運動:
・ウォーキングなどの軽い運動や筋力トレーニング
3. 栄養バランス:
・カルシウムやビタミン D の摂取を心がける
・バランスの取れた食事を心がける
4. 定期的な健康チェック:
・骨密度測定を定期的に受ける
■まとめ
骨粗鬆症は早期発見と適切な管理で予防・治療が可能です。健康的な生活習慣と定期的な検診で、いつまでも活動的に過ごせる身体づくりを心がけましょう。骨を守ることは、健康で豊かな人生を送るための重要な一歩です。
(整形外科医師 林 憲斗)